2014年1月10日金曜日

駄目ギター その1『ギブソン・逆V』

 ぼくの大好きな駄目ギター。愛すべき駄目ギター。真面目に考えて、真面目に作られたはずなのに、人気が出なくてひっそり消えて行った、駄目ギター。
 エレクトリック・ギター・メーカーの2トップ、ギブソンとフェンダーにも、そんなギターがあります。

 キング・オブ・駄目ギター。
 発売当時、ギブソン狂った…、と全世界のギブソン・ファンを不安にさせたエレクトリック・ギター。
 かっこよくキメッキメに弾きまくる映像が浮かばないギター。
 矢印ギター。
 ハイレグ・ギター。

リバース・フライングV
2007年発売
Reverse Flying V
http://www.gibson.com/jp-jp/Divisions/Gibson%20USA/Guitars/Flying%20V/Reverse%20Flying%20V/

 コリーナ()のフライングVのボディ・デザインを、大胆にリバースしました。30万円くらいで売り出されるも、全く売れず、売値はどんどん下がりまくり、ぼくが見た中で最安は5万円だった。

「コリーナ」とは、ギターの材料となる木材の名前。コリーナ材を使っているので、コリーナと呼ばれている。

普通のフライングV(コリーナ)
Korina Flying V
http://www2.gibson.com/Products/Electric-Guitars/Flying-V/Gibson-Custom/1959-Korina-Flying-V.aspx

普通のフライングV(コリーナじゃない)
Flying V
http://www2.gibson.com/Products/Electric-Guitars/Flying-V/Gibson-USA/Flying-V.aspx

 ギブソン社は1958年、フライングVとフューチュラ(エクスプローラー)という変形ギターを発売しました。ソリッド・ボディの、どんな形にも加工でき、それにネックを付ければギターになる、という長所を最大限に生かした最先端モデル。ところが、最先端過ぎ、時代のはるか先を行き過ぎていたために、全く売れず。
 リアルタイムで使っていたのはアルバート・キングくらいか。キンクスのデイブ・デイビスはその少し後か。

アルバート・キング
ブルース三大キングのひとり
デイブ・デイビス
イギリスの兄弟ロッカーの弟のほう

 その後、1960年代末に、キース・リチャーズやジミ・ヘンドリックスが使ったりで認知されてきて、1970年代のグラム・ロック、HR/HMブームを経て、人気の定番モデルとなりました。

 そんな由緒あるフライングVを、大胆にも逆さにしちゃったのが、リバース・フライングV。逆V。
 1958年の悪夢を、21世紀にも起こしたギター。逆V。萌える。可愛い。
 キング・オブ・駄目ギター・オブ・マイン・イズ・逆V。

 そういえば、LOVE JETSという宇宙人トリオのロックバンドが、ギブソンの逆Vが発売される以前、ESPにオーダーした逆Vを使っていた。あれはかっこよかった。
 何故だ。宇宙人だからか。

LOVE JETS
ベースとドラムで長く活動していたところに
ギターが加入したとの噂
ギターの宇宙人がいなくなった後も
元の2人でたまに活動しているらしい
参考動画

LOVE JETS
http://columbia.jp/~lovejets/

2014年1月9日木曜日

駄目ギター その0『序章』

 駄目ギターとは、ぼくが「このギター、(コンセプトが)駄目だなー、駄目なところが可愛くて好きだなー」と思う楽器本体のことです。それ必要かな?という機能が付いていたり、かっこわるくない?というデザインのギターのこと。愛すべき駄目ギター。駄目ギター大好き。

 エレクトリック・ギターという楽器は「ギターで管楽器や打楽器に負けない大音量を出したい」という要望から産まれました。ビッグバンドジャズが流行っていた20世紀初めのお話。
 最初はアコースティック・ギターに弦振動を拾うマイクが付けられます。(
 第二次世界大戦後、板状のボディが開発され、現在のエレクトリック・ギターという楽器のイメージが出来上がります。この「板状のボディ」、通称「ソリッド・ボディ」が、駄目ギターの大事なポイントです。

一番最初にエレクトリック・ギターとして商品化されたのはアコースティック・ギターではなく、実は、ラップスチール・ギター。リッケンバッカー社から1932年に発売されたフライング・パンがそれ。

 エレクトリック・ギターの基礎知識として、世のエレクトリック・ギターのほとんどはアメリカのギブソン社とフェンダー社の亜流です。これは過言ではありません。

 エレクトリック・ギターを最初のアコースティック・ギター期から作っていたのがギブソン社。ギブソンの歴史は19世紀末に始まります。エレクトリック・ギターを作り始めたのは1936年。

最初期のエレクトリック・ギター、ギブソンES-150
1936年発売
別名チャーリー・クリスチャン・モデル
ギブソン
http://www.gibson.com/jp-jp/home/

 ソリッド(板状)ボディでエレクトリック・ギターに革命を起こしたのがフェンダー社。
 ボディが空洞のアコースティック・ギターにマイクを付けたものには、ハウリングが起きやすいという欠点がありました。その欠点を、空洞を無くした板状のボディにするという発想で解決したのです。
 この発想のギター、ソリッド・ボディーのエレクトリック・ギター、フェンダー社が商品化する前に、ギタリストのレス・ポール氏がギブソン社に提案していました。ところが、ギブソン社はその新しい発想を理解できず、断ってしまいました。その後、フェンダー社の大成功を見て、慌ててレス・ポール氏に連絡をしたという経緯があります。


手前のスティーブ・クロッパーが持っているのが
世界で最初に商品化された板状ボディのエレクトリック・ギターである
フェンダー・テレキャスター
1950年発売
(エスクワイヤー、ブロードキャスターの別称については省略します)
フェンダー
http://www.fender.jp/

 前提長かった。これでもかなり削りましたのよ。
 ここからようやく、ぼくの大好きな駄目ギターの話になります。
 が、好きなものをあれこれ全部書くと、とりとめがなく長くなるので、上記の二大巨頭、ギブソンとフェンダーの駄目ギターにしぼって書きます。
 そして、ここまででもだいぶ長くなったので、分割します。